Escape from Freedom - EOS 5D MarkII

20111105t20
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f2.5 1/640sec ISO100 0.9m トリミング)−−−藍川智瀬さん
空から降ってきた EOS 5D MarkII を投入しての最初のアマチュア向け撮影大会の参加は、モデル事務所「クレアトゥール」さんのところとなった。
いったい、もともとは株式投資記録のブログ、最近では自転車旅日記のブログだったここ「はてなダイアリー」で、アマチュア向け撮影大会の写真を掲載していく、というのはどういうことなのか自分でもよく分からないというか、そうすること自体はとても自然の流れのような気もしつつ、その意味はよく分からない。クレアトゥールというのはフランス語で、「ファッションデザイナーの中でも特に創造性が高く、流行に左右されず、一貫して自分のスタイルで創作している人のこと」を言うらしい。流行に左右されず、一貫して自分のスタイルで創作しているはてなブロガーのことをなんというのかは知らない。はてなトゥールだろうか。はてなトゥールになりたい。俺もはてなトゥールになって雑誌に連載したい。本を出したい。ベストセラーを出して紅白の審査員をしたい。アニメ化されたい。テレビ東京仏頂面のまま池上彰さんに質問を浴びせてうまいことまとめられたい。
 
 
 
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EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f2.8 1/1000sec ISO100 2.98m)
しかし自分の場合、流行に左右されず、一貫して自分のスタイルで生きるということもできていない。流行に左右されるということさえできていない。流行を感知することすらできない。かつてはこのことに危機感を持っていたはずなのだ。俺にはどうもなにかしらの欠陥があり、その欠陥が新たな欠陥を生むというタイプの、悪い循環の過程を生きている。ここから脱出するためのアクションが必要で。大学に入ったばかりの頃の自分の行動指針は、そのアクションがなんなのかを探る、自分探しの旅であったような気がする。もちろんこうして一人ぼっちでモデル撮影会の現場に突入して淋しさと孤独、虚しさと興奮、妄想と昼メシ、上から目線と下から目線、出ない声、咳払い、ポーズ指示、出ない声、咳払い、ポーズ指示、出ない声、ポーズ指示、咳払い、下から目線、出ない声、咳払い、ポーズ指示の悪循環を繰り返している昨今では、自分がすべきだったことは自分探しではなくて友達探しだったのだ、と痛感しているのだが、それに気づくのはずっと後のことであり、気づいたときにはもうただのツイッターになってしまっていた。
 
 
 
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EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f4.0 1/500sec ISO100 1.64m)
そういうタイプの思念が頭のなかに渦巻く左脳とは対照的に、右脳さんのほうはベンチにかけてもらい、絞りを開いて、うむ、どうしたら昔どこかのフォトテクニックデジタルのグラビアで見たバングラデシュ人と日本人とロシア人のクォーターのモデルさんみたいに脚のラインを綺麗に写せるんだったけかな、と考えたりしている。そしてカチャーン、カチャーン、安っぽい EOS 5D MarkII のシャッター音のリズム。リズムに合わせて表情を、顔の向きを、手の位置を、視線のベクトルを、こまめに変えてくれるモデルの藍川智瀬さんは検索しても出てこないから次にいつ会えるということもない気がする。そして、クレアトゥールさんはリンクバナーを貼ってくれろというので見てみるとホームページ上になつかしの忍者ツールの無料版が貼ってある。リファラを辿ってこのブログをチェックするんだろうか。俺はなにを書いているんだろうか。こんな自由に書いていていいんだろうか、こんなローカルなジャーゴン日記ではなくて、もう少し日本語らしい言葉で、今をつぶやくのでなく記事を書くように書くべきではないだろうかという気がする。もっと普通の、あるいはフラッシュバリバリの、もしくはそれなりにレトロな「ホームページ」にすべきだろうか。。。
 
 
 
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EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/1600sec ISO100 1.05m)−−−水野玲奈さん
大きな公園で開催する囲み撮り撮影会と、窓のない雑居ビル的なスタジオで蛍光灯をたくさんつけて撮影する水着撮影会・・・どちらかというと初心者でも光量を気にせずに簡単に撮れることを基本とするタイプ・・・の撮影会にばかり出ていた自分が、今回はモデルさんと二人きりで数十分、どこで撮るか、どんなポーズで、光の量は、雑談、次のポーズ、レフ板の位置は、雑談、次の場所、ストロボ、雑談、という目まぐるしいワークフローを任されて放牧される。参加する前は緊張で吐きそうになっていたりしたのだが、参加してからも雑談の盛り上げ力のない俺にはなかなかキツい時間帯が少なくなかった。撮るだけだろ?簡単だろ?ではないわけで。しかしそれでも、自分のようなカメラのファインダーを通すことなしには女性の瞳を直視することの全くできない人間にとっては、撮影会は至福の時間になる可能性を秘めている。いや秘めていないのかもしれない。まだまだ、撮り終えて会場を去ってから家につくまでが一番楽しい、という状態から先に進めていない気がする。それは、昔(中略)の折に、結局一緒に飯を食い終えて地下鉄の入り口で別れて、それから最初のメールが来たときが一番、良い、というのに似ているだろうか。いや似ていないかもしれない。ともあれ、限度というものがあるだろう、という常軌があるならば、それを確実に逸した無口ぶりを発揮して、絶望の底から空を見上げるような心境で帰宅するという危険性も多分に含んでいる。そんなとき、俺は自分のことを戦場カメラマンと呼びたくなる。
 
 
 
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EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/6400sec ISO100 2.38m)
今だから分かるのだが、今回のスタイルの撮影会(モデルを予約して1vs1、大きなスーツケースに用意された私服や衣装から好みのものを着てもらってじっくり撮るような、いわゆる「個撮」も同じ場で開催しているが、そうではなくお試しコース)では、参加モデル人数と「カメラマンさん」の人数の比率が割合強い関心事となる。この日はおよそ1.3〜1.5倍の倍率だったように思う。で、モデルさん1、カメラマン3以上となると、撮れる枚数がグッと減る。それでも常連で事務所に所属して断続的に撮影を入れられるモデルさんにはカメラマンが多くつく。一方で(ここの主催において)新人であったりすると、つくカメラマンが少ない。1vs2が理想であろうと思う。けれども、モデルに対してカメラマンが誰もつかない場合もあり、カメラマンも空気を読んで、適当にバラけたり、などする。そうすると、1vs1の撮影になる組が多くなる。
 
 
 
20111105t06
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/5000sec ISO100 1.96m)
建物の一方が吹き抜けになって、擬似室内と中庭、どちらもおよそ屋外レベルの光量を得られる広いスタジオ、その撮影ポイントとなりそうな箇所に散り散りになったモデル1、カメラマン1の組が写真を撮る。30分間の二人きりの初対面の気まずさを俺はうまく制御できないでいる。「自然な表情をスナップ風に撮りたい」とかなんとか、そういう話ではなく、俺はまだどういう写真を撮りたいのかをタンブラー上に整理しきれていない。最近はベストセラー作家、岩崎夏海さんの写真ばかりタンブラーしている。それでいて今日は EOS 5D MarkII の初投入でもあり、操作もおぼつかないし、ピントの具合も気になるし、電池の持ちはどうか、40GBで足りるのか足りないのか、など心配事が絶えない。レンズを50mm単焦点一本に絞ったことだけが救いだ。ほどほどに広いスタジオでレンズをあれこれ変える必然性は少ない。しかしみんなレフ板を個人で持参しているのに俺だけ持っていないような気がする。レフなしで、ちゃんと撮れているのだろうか。少なくとも瞳は真っ黒、キャッチライトなしになってしまうではないか。でも EOS のストロボ操作は慣れてないし。そんな左脳状態な埼玉のおっさんと、若いモデルさんにどんな会話が成立するか、右脳で考えることができない。
 
 
 
20111105t07
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/500sec ISO100 1.29m)
およそ撮影会で出会う我々は一応、生身の人間であり、普通はブログ持ちである。ブログで挨拶し、近況をチェックし、会話をする。しかし続かない。皆どうして、うまくやれてるのだろうと感心してしまう。しかしまぁ
 
 
 
20111105t08
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f3.5 1/200sec ISO100 2.38m)−−−真田つばささん
ここは辺境のはてなブログだし、どうせ誰も文章まで読まないのだし、無駄口を書かないで淡々と写真を掲載していけばよいのか。。。
 
 
 
20111105t09
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/1250sec ISO100 1.29m)
つばささんはポージングが上手で撮りやすかったのだけど、空が曇ってくると光量不足に苦しんだりした。まだ5D2の扱いに慣れていない。
 
 
 
20111105t10
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/2000sec ISO100 1.29m)−−−中川愛さん
撮影用のスタジオなだけあって、壁の色も工夫されているし、太陽光をうまく入れると、つまり人が見て自然に見えるのが自然光であって、自然の光の陰ができると、それが面白いと思うのが不思議だ。これをまたストロボでやろうとしたり、レフ板使ったり、自然な光を捏造したりする。そのあたりの奥の深いところが沼なんだけど、この日はまだピント合わせのことで頭がいっぱいだ。ボカすまでもない背景のとき、それでも絞るか絞らないかいろいろ悩んだりとか。
 
 
 
20111105t11
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f2.8 1/200sec ISO100 1.29m)
で、一日中撮るわけだけど、あまりにも会話の続かない俺は途中で精神的に負傷して退散してしまうことになる。1VS1で会話ができない、てことは、ようするに俺は人として、社会人として、自立できていないということだよな、と思う。しかしそれでも撮れた写真をRAW現像する作業は楽しかったし、撮影会そのものも楽しめるようになることがないとつらい。
 
 
 
20111105t12
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/4000sec ISO100 0.90m)−−−藍川智瀬さん
写真は少しピンあま。だがそこがいい、とか。
なんとかいう映画で、さりげなしに髪をかきあげる女優、それを気に入ってもう一回やって、とアスクする男優、のシーンがあったけど、俺もアスクしてみた一枚。ポージングとして髪をかきあげ気味に止めてしまうと、それは止まった写真になってしまう。。。
 
 
 
20111105t14
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/1250sec ISO100 1.44m)
これもピントあまい。
写真にタイトルをつける、て文化もあるのだろうけど、あまり得意でないというか、どちらかというと、単発写真というのが苦手というか。思いつくのはただ、いつもとは違って、自分で自由に指示を出して自由に光を操って好きなように撮ることができるという自由からの逃走、それだけ。この自由から逃走したい。
 
 
 
20111105t15
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/2000sec ISO100 1.17m)
ただし、そういう鬱屈・屈託とは別に、突如として撮影に「ノってくる時間」というのもある。依然として俺だけ会話ができないのだが、それを苦痛に感じるヒマもなく夢中でシャッターを切っている時間帯がある。それはなんだろうか。写真だからといって、そういううまく説明できないものを俺なりに俺の中でだけアートの一種と呼ぶことにしたらどうだろうか。呼べないだろうか。
好きではあるんだけど、まだまだ5D2のセンサーに萌えているだけで、俺がそこに足を運んで実際に自分のカメラで撮ったという実感は持てない。アングル的に、少しだけスナップ寄りと言えそうな、しかしポージングはカッチリ系な感じだし。撮影会然とした写真であればあるほど、それは撮影会に行った俺、という文を書かないと、日記にもブログにもしかねるところがあり、そうなると仕事サボって文章書いていかないと投稿ボタンが押せなくなり、そうすると俺が会社をクビになる日が近くなる。
 
 
 
20111105t16
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f2.5 1/500sec ISO100 1.44m)
目線の移動指示ひとつ出すのもまだこわい俺。そうするといい感じになるのか、そうでもないのか、まったく予想もつかないから全てがこわい。のだけれど、そうして指示を出して自分が「いい」と思えるパターンがいくつか出てくると、いわゆる「ノってくる」状態なんだろう。説明できたじゃないか。だからこれは(言うまでもなく)アートではない。
 
 
 
20111105t13
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f1.4 1/1600sec ISO100 1.44m)
それはともあれ、EOS 5D MarkII だと、50mmの室内で被写体が(子供でなく成人の)人物であってもこれだけ背景ボケしてくれるのはありがたい。
 
 
 
20111105t18
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f2.5 1/640sec ISO100 1.17m)
そうして、コミュニケーション能力のない自分のために、モデルさんがバリエーションを考えて動いてくれるときには、プロの言葉で「撮りやすい」とか?、俺の感覚だと「うれしい」みたいな感じになる。
 
 
 
20111105t19
EOS 5D MarkII + SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM (f2.5 1/640sec ISO100 0.90m)
 
 
 
 
 
 
 
20111030t01
OLYMPUS PEN E-P1 + M.ZUIKO DIGITAL 9-18mm f4.0-5.6 (9mm f4.0 1/10sec ISO400) 
 
 
 
 
 
CANON EOS 5D MarkIISIGMA 50mm F1.4 EX DG HSMref
 
 
 
モデル:藍川智瀬/水野玲奈/真田つばさ中川愛
場所:スタジオ・バジル
日時:2010.10.30 10:00〜15:00 曇りのち小雨
カメラ:CANON EOS 5D Mark II
レンズ:SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
主催:モデルプロダクション クレアトゥール
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