夜勤工場夜景の夜

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JR鶴見線はJR鶴見駅から国道を通って海芝浦まで行ったり大川まで行ったり扇町まで行ったりと複々数あるからJR鶴見駅からの本数は土曜日曜でもそれなりに多く、浜川崎駅では南武線のようなものにも乗り換え可能だしタモリ倶楽部でもやっていた。東芝社員でなければ改札を出られないという日本一海に近い駅、海芝浦駅が有名だろうか。もっとも海芝浦に関しては在華坊さんのBlogが詳しいのでこのページは閉じてそっちを読むべきであり。

鶴見線を旅する - 日毎に敵と懶惰に戦う
降ったり止んだりの土曜日、鶴見線小一時間の旅、そして船はゆく - 日毎に敵と懶惰に戦う
http://tokyodeep.info/2009/08/19/160400.html
扇町が一番長距離になるけれどもここは猫スポットとしても有名。同じく猫スポットでもある「昭和」は、横浜界隈で最も工場が近くから撮れるスポットの一つとして、ネット検索に引っかかる。
 
 
 
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能力不足が原因で非正規社員をしている38歳無職(厳密には「無職」とは言わないのかもしれないが、正規の仕事はできていないわけでまぁ無職)・無趣味な38歳の俺が、三脚を使ってじっくりと暇つぶしと物欲の言い訳(それも自分に対する言い訳)のためだけに写真を撮るための練習場所としては、土曜日曜の夜に人も少ないこの界隈がよろしいだろうとJRに乗り込むと、列車は武蔵白石駅で止まりとのこと。嗚呼、そういうのもあるのか・・・と仕方なく、祭りのハッピを来たヤンキー風の女性が一人いたほかには誰もいなかった列車を降りて、そこから徒歩で浜川崎駅方面へと歩き出す。
 
 
 
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能力不足が原因で非正規社員をしている38歳無職の俺が、いずれ訪れる不景気や健康の理由ではなくて純粋な能力不足と勤怠の悪さを原因とする解雇の日がやってくるまでのつかの間の期間のヒマつぶしのためだけに、歩道もない道を時折すれ違う自動車に轢かれないようにキタムラで買った中古500円のケースに入れた中古1万円ちょいの三脚をかついだまま、線路と産業道路を渡りつ戻りつしながら東へ進む。最近のカメラは背面液晶が立派になってきたから、ずいぶんISO高感度で綺麗に撮れるものだな・・・とそのときには思うのだが、こうしてパソコンに取り込んで見ると、結局それなりのものでしかないよなと落胆する産業道路。いやはや、コンデジの合成夜景機能を使ったほうがずっとマシなんだ。
 
 
 
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浜川崎駅に着く。列車の姿はない。能力不足が原因で非正規社員をしている38歳無職の俺でも最新のカメラで撮れば最新のカメラで撮ったような写真が撮れるはずだし、それは素晴らしいヒマつぶしになる。バリアングル液晶をヘイの上に乗せて撮れば、多少はISO感度を下げることができる。それでも電灯の明かりが丸いのは絞りを開放にしているからだ。三脚で固定してギュッと絞れば光芒が見えるはず。
 
 
 
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度胸のないうえに車を持たない自分がデカい一眼カメラを複数台抱えて歩くことのできるエリアは人のいない場所か観光地のみ。しかしこのあたり、撮り鉄先生が多いようで、浜川崎の先の大きな踏切には三脚が何本も並べられて、男子高校生だろうか、地味に列車の来るのを待っている人がちらほら。女子高生とは人生観がすでに違うんだ。しかるにこの俺の上から目線はなんなのだろうなと思う。まるで自分が女子高生であるかのような上から目線を語りながら、その実、現役の男子高校生と非正規社員の俺のあいだにコミュニケーションは成立せず、かつ正しく下から目線で人を見る能力すらもない。つまりは世界観が狭すぎて物事を社会を世界を現実を正しく客観的に認知できない運命なのだ。そういう運命だから写真機に惹かれるのだろうみたいなポエムを書く気力もない。ただ物欲に手を動かされてシャッターボタンと呼ばれるボタンを押しているだけのタンポポ
 
 
 
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道がややこしくなってくる。俺の目指すのは浜川崎ではなくて「昭和」駅。死にたい死にたいと声にならぬ声でリアルにツイートしながら車に轢かれないように気をつけつつさらに東へ進む。死にたいという思いと、あまり遅くなって帰りの電車がなくなって困る、という思いのはざまで揺れるたるんだ腹の肉、もしくはたるんだ腹の肉のかつてあった腹の皮。俺はダイエット in vain をはじめて40日を過ぎたから多少は以前よりも肉が減った。食うためのものを稼ぐことができなくなってから死ぬまでのバッファが減った。人の通れる道と車の通る道が分けられている。線路を何度も渡ったりくぐったりする。ちなみにこの写真がISO12800なのだが、今回EXIFは晒さないことにした。機材よりも写真に集中してみよう、と思った。思ったところで、俺はバズーカー砲レンズに付属する三脚座、つまりそれを三脚に取り付けるための部品を持ってくるのを忘れたことに気づく。嗚呼、能力不足。物欲の言い訳のためにシャッターボタンを押すための能力も不足しているというわけだ。いったい、なにを以て「足りる」とするのか? それは俺のことばがなにか意味を持ちうるかどうかではないかなと思う。能力が不足しすぎて俺のことばはなにも意味をなさない。ただのリアルのツイッターである。
 
 
 
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途中で不安になり、アイホンの地図を見ながら、「昭和」駅が橋の向こうにあることを確認しながらさらに進む。こんな時刻でも郵便局の前のバス停には正社員らしき人々が何人かベンチに腰掛けて会話=コミュニケーションをしている。いっぽうで再就職が不可能になる35歳をはるか以前に過ぎてなお一番末端、新人のやるような仕事を非正規社員としてお情けでやらさせていただいている38歳の俺は、デジタルカメラとレンズと三脚をかかえて一人でぶつぶつツイートしながら工場に向かっているのだ。
 
 
 
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さて、ここからカメラを持ち替える。今までのは安カメラ。ここからは高カメラ、というわけだけど、感度はいろいろ変えつつも、どの写真をどの感度で撮ったかは忘れたし、今朝なに食べたかも、明日の仕事の内容も、来年どうしているかも、全部どうでもいいんだ、そんなことは。カメラを据えて自動露光すると、少し明るくなりすぎる気がする。こいつは三脚なしの据え置きで撮ったけれども、あとで露出を下げる補正をしたり。そんなことならはじめから感度を下げれば良かったわけだが、でもEXIF消しちゃったしもうなにも分からない。
 
 
 

場所はこの辺。橋の中央部西側から、線路と川を挟んで南西側、お目当ての、昭和電工東京ガスの施設を撮る。こいつはプラスチックをリサイクルする工場なのかもしれないが、ネットで調べて眺め読みしただけの知識で語っているだけだからよく分からない。(たぶん)プラスチックをガス化する施設がここから撮れる。俺もプラスチックを経由してガス化されて川崎の海に沈んでリサイクルされてイケメンもしくは佐々木希に生まれ変わって人生を逝きなおしたい。
 
 
 
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キタムラの500円ケースからジッツォのトラベラー三脚を取り出して広げ、マンフロットの雲台に高いほうのカメラを据える。。。その姿を安いほうのカメラで撮る。海風が涼しく強く、またトラックなどが通るとガタガタ揺れるコンディションであるから、脚は3段まで。エレベータは下げて、控えめ三脚の状態。だが、さすがに日曜だから交通量は少なく、トラックに橋を揺すぶられて写真がダメになるということはなかった。ほかに望遠レンズを持っていないという理由で装着したのはF2.8通しの巨大バズーカー砲なのだが、三脚座がなくてカメラ本体側のねじで止めても三脚の脚の向きにさえ気をつければ安定することが分かって安心した。完全に無能なのに俺はツイてる、と思った。
 
 
 
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縦向き三脚用にはこの一番右のプレートを使用している。俺はバカなのでカメラ用のプレートブラケットをたくさん試したが、現在も現役なのはこの3枚だ。右から、縦向き三脚用、縦撮り小型ストロボ用、縦撮り大型ストロボ用、そしてTTLシンクロコード。ストロボ用プレートは自分でぐいっとカーブをつけたものだ。市販の複数プレートを重ねるタイプはかさばるし重くて好きになれない。もっともこれらにもそれぞれ課題があり、改善という名の物欲ワールドは続いているのだが。
 
 
 
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めいっぱい寄る。
 
 
 
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いろいろ補正してみる。補正はあまり凝らないで、覚えたパラメータだけいじる感じ。
しかしどうも写真というより絵画ぽくなるのが残念というか力不足なんだろう。寄りすぎると構図はつまらなくなるが、等倍表示したときにより精細に細部が見える。よく解像感というけれど、俺の今の考え方はつまり、解像感を上げるには被写体に寄ればいい。どうしても寄れない場合に、あるいはどうしても何mmの焦点距離で撮りたい、どれほどの被写界深度で撮りたい、被写体との距離が何m何cmにしたい、もしくはそれが限度だ、というこだわりや制限があるときに、それでもなお少しでも解像感を上げたいという場合にはじめて高級なレンズに手を出せばいいんじゃねえのか、という感覚。開放F値焦点距離といった当たり前のスペックにはいろいろこだわるのだが、そこから先、さらに高級で名玉といわれる云々みたいな話はどうも俺にはまだよく分からない。コンパクトのデジカメで思いっきり近距離の被写体をサンプルにかかげて、どうですか綺麗でしょうといわんばかりの広告を見たりブクマを見たりするとおいおいお前はなにを言っているんだ?という気分になる。
 
 
 
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横向き。とくに現像ではソフトの持つレンズ歪曲補正データを適用してデフォルトの効果をかけただけで、それ以上のパラメータいじりはしていない。
 
 
 
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同じ写真の暗部を起こして色温度も少しいじったもの。どうしても拡大(というか、等倍)表示してみたくなるのが人情なのだが、悩むのは絞りの位置で、理論的には絞ったほうが奥でも手前でもピントの合う範囲が広いし、とはいえこのレンズの持つ解像力のピークはF7.0近辺なのではないかといろいろのサイトから読む。しかしそんな差異など俺には分からないし、それよりも重要なのはライブビューのマニュアルフォーカスで合わせるピントの精度。そして絞りに悩むと書いたのは、それは絞ったほうが光源が光芒を帯びて白い中央が小さくなるからこの手の工場を撮る場合の絵のうるささが減るからである。減るのなら思い切り絞ればいいじゃないかというところだけども、俺はケーブルレリーズなんて使わないし、10秒のセルフタイマーで撮っているので(これはそれなりに望遠で撮るため、シャッターボタンを押した振動が収まるまでに2秒では足りないのだ)露光時間のMAX値が30秒となる。30秒光を取り込みつづけてもまだ暗くなってしまうような絞りにはできないのだ。それならISO感度を上げればいい、てことになるが、その分暗部ノイズが増えるから、感度と光芒のせめぎあい、てことになる。
 
 
 
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ブリーチバイパス。日本語で「銀残し」。暗部強調というか。真ん中やや右の遠くに見える小さなタワーの右下に見えるのが花火。鶴見線でハッピを着たおねいさんがいたのは、その界隈で祭りをしていたからだった。しかし工場撮りの30秒露光では、花火は暗すぎてこんなもんになってしまう。感度を上げて3秒ぐらいで同じ明るさをつくれば花火はもっとはっきり写るんだろうけど、そこまで咄嗟に手が回らない。
 
 
 
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同じ写真の色温度調整版。いや、構図は同じでも、写真は別物か。こちらのほうが絞りを絞っているから点光源が小さく、光芒が長い。最初の数枚と比較して分かるのは、正面の電灯がいくつか落ちていること。サイドは明るくても正面は消灯されて暗くなってしまった。いろいろ画像検索で工場写真を見ると、やはり美しく撮れているものは、この照明の数、位置、などが素晴らしい。べつに撮り手がライティングするわけではないけど、光次第なのだよな、と。
 
 
 
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こちらはちょっとHDR風味に。能力不足が原因で非正規社員をしているような人たちが消費してゴミとして捨てたコンビニのプラスチック容器たちがガス化される様子、その煙がよく見えるようになった。本当にそういう煙なのかどうかは知らない。ネットで読んで、勝手に想像しただけだ。
 
 
 
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花火は難しい。
 
 
 
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1枚撮るのに最低1分近くはかかったりするので、あっという間に時間がたってしまう。橋を渡って少し進むと「昭和」の無人駅だ。列車まで時間がある。ホームから工場は見えなかった。
 
 
 
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猫スポットでもあり、猫を撮る。
 
 
 
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やがて鶴見線の鶴見行きがきた。
帰りの列車もすいていた。こうして夜景など撮ろうと思うと、能力不足が原因で非正規社員をしている自分が家庭はおろか、自家用車を1台すら保有できない身であることがつくづく残念であるなとは思う。荷物は重いし、機材も最低限に絞らなければならないし、終電時刻に縛られて、なかなか撮影に集中できないし移動範囲も狭まってしまう。車を持たずに偉そうな顔をしていられるのは世界中探してもはてブ村しかない。ああ、なにか良い方法はないものか。
 
 
 
 
   ★
 
 
 
 
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そういうわけで俺は、人力の自家用車を使うことにした。自転車脳の恐怖。
 
 
 
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さて、俺が自宅から気軽にサクッと行ける工場萌えというと、鶴見線・・・川崎市川崎区の昭和駅近く・昭和電工東京ガスか、磯子駅手前の萌えスポット3連発、JX日鉱日石エネルギー東京電力横浜火力発電所、および電源開発磯子火力発電所ということになる。磯子ならクロスバイクであっという間だ。
 
 
 
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どうせ夜は眠れないんだ。徒歩よりもさらに荷物は制限されるんだけども、以前に東急ハンズの年始セールで買ったクロスバイクには、前カゴと後ろカゴをつけてある。それなりに荷物は積めるわけで。カメラバッグの中に入れたカメラ・レンズとは別にカメラバッグをもう一つ下敷きにして振動が伝わりにくくなるようにして網をかけて保護。三脚はキタムラの500円で買った中古バッグに入れてたすきがけに担ぐ。担ぐのはトラベラータイプの小さく畳めるタイプ。
 
 
 

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久しぶりにクロスバイクの車載カメラを使って低感度で撮ってみたが、なかなか厳しいものがあった。(※信号できちんと停止するBlue-Period氏)
 
 
 
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わぁい東京電力横浜火力発電所 あかり東京電力横浜火力発電所大好き!
 
 
 
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ここに限らず、素晴らしい工場施設は敷地の奥にあって部外者が簡単には撮れないケースがほとんど。その点、海を挟んだ向こう、JX日鉱日石エネルギーの施設は望遠レンズがあれば撮りやすい。以前も撮っているが、今回はカメラが少し高級になってるし撮影技術知識も少しだけ増えてる。けど、200mmではちと、ギリかなぁ。。。
 
 
 
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右に船が停泊して赤い光を放っているのだが、かなり絞らないと爆発にしか見えない。
 
 
 
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ここは日曜深夜でも、夜釣りをする人が一定間隔おきにいるから自分もその間隔を守って適当な位置に三脚を立てている。その後何度か移動しつつ撮りなおしている。
 
 
 
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船のほう。
 
 
 
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これが望遠のベストショットか。もうちょい長い玉が欲しい。
 
 
 
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で、むしろ写真としては、広角のほうが楽しいわけで。Jパワーの施設を超広角で。
 
 
 
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こちらもJパワー。中古1万円ほどの激安レンズなので、各所にある照明のためのフレアとゴーストがすごい。ゴーストの出なくなる構図や絞りをいろいろ探してもなかなか無駄っぽい。ニコンのナノクリレンズ欲しい。。。。と、ここまで思考は及んだのだが、もしかしたらプロテクト保護フィルターをはずせば改善したかもしれないのに試すのを忘れた。海ぎわで湿度も高く、あまり直でレンズを晒したくない気持ちもあったけど。
 
 
 
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俺のクロスバイクと光の輪っか。遠くには満月もあるのだが。
 
 
 
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輪っかのあまり出なくなる位置をかなり探ったすえの1枚。
 
 
 
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それなりに車が止まっているのは皆、夜釣りにやってきているからだ。車を持てるのは正社員だからだ。正社員が務まるのは、俺にない体力と知力があるからだ。
 
 
 
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海の向こうもしぶとく撮っていたのだが、やはり焦点距離不足でいまいち。
 
 
 
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気づくと時刻は午前3時を過ぎていた。東から昇る太陽をバックにしたJX日鉱日石エネルギーを狙っても良かったのだが、もう疲れたし、ものすごく早く会社行かなきゃだし。。。
 
 
 
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横浜はじまったな市
 
 
 
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明るくなる頃に帰宅、風呂に入って、それから出社。
 
 
 
inspired by ngtn on Twitter: "#SIGMA #SD1 工場夜景。SD1が本気を出した。 http://t.co/MGy9YtsC"
参考:【工場萌え】魅惑の工場夜景を満喫するまとめ - NAVER まとめ