昔の彼女(19)の写真が出てきた。

誰かに肩を寄せて笑っている、みたいな写真を切り抜いたもので、ブスだなぁと思う。実際に会ったときにはそう感じなかったので。実際にはそのころは別の、爆笑問題太田の嫁にくりそつ(似てるのは顔だけ)のコ(24)に首たけで、パウル・クレー自身も人物よりは作品自体を見てほしかったと思うの、とか言う彼女の会話を脳内にメモしては絵とか音楽とかの勉強していくことが楽しかったのに、昔の彼女(19)はやがて今度、うち来てよ、鍋パーティ、とか言い出して、つまり家族に会わせる気だったようで、あ、なんか、そういうのじゃない、俺、違う、みたいな感じがして、当時親のマーク2で鎌倉とか横浜とかをドライブするデートばかりだったが、(一方、太田の嫁とはもっぱら美術館めぐり、あ、これって二股?とかニヤニヤしつつ)、リア充だらけの心理学ゼミ、のちに女子アナになる人とその仲間たち、みたいな中での孤立、の鬱憤ばらし、のような感覚もあり、週3で銀座でオフィスワークバイトもしていて、なんとなく学歴厨・・・というのは、職場や大学には東大か慶応か早稲田の人しかいなかったので、短大生か・・・みたいな失望感覚もあった。

それで、自分がなんとなくカトマンズへ行きたくなり、旅行に行く、と言い、成田まで見送りに行く、という彼女(19)と、旅行、いいかもね、という太田嫁(24)のGAPというか、ともかく来なくていいから、帰国したら電話するから(当時は互いに実家の固定電話)、と言い、実際にバンコク行きのエア・インディアに乗ると、隣席がキャバクラ嬢のまいちゃん(26)だったわけだ。

もうクスリ(ドラッグ)は止めてる、とあとで聞くことになる彼女はインド人が書いたことになっている日本語の宗教本を読んでいて、自分も途中で借りて読んだりした。面白いことに、上記のような恋愛未満な話をすると打ち解けて、つまり、恋愛めんどくさいから、そういうの、いいから、モードではなかった若さの力で打ち解けて、旅慣れた彼女の流儀で(到着ロビーではなく)出発ロビーのタクシーをつかまえて、カオサンロードへ向かう。で、相部屋しかあいてないって、いい? と言うのだ。とくべつに美人ではないかもしれないけれどもキャバクラ嬢さんだ、色気を消してるんだろうけど色気がある。先、シャワー浴びてくるね、って、「シャワー浴びてくる」という言葉になにか意味を見出すほどにもなっていなかった自分さえ、なんだか胸がモファモファするような感じはした。それで次に自分が浴びたのだが、冷水しか出ないことにビビった。そりゃそうだよ、安宿だもの。

自分の予約済のカトマンズ行き飛行機は二日後で、まいちゃんはデリーへ向かう飛行機を旅行代理店で交渉していて、取れたら翌日、取れなかったら、あさってだから、明日、踊りに行こうよ、とか言うのだ。踊り、ですか。はぁ。

結局まいちゃんはデリー行きのチケットが取れてすぐに出発してしまったので、自分はパッポンへ行って、当時は、断言できる、100%好奇心を満たす目的のためだけに、買春をした。宿のおばちゃんの、あらあら、という、なんだか野原をかけまわって泥んこになって帰ってきた子供を見るようなやさしい笑顔で、女を連れた円高日本人学生の俺を、そのまま部屋に通してくれたのだ。

その後カトマンズに行って、いろいろあったものの、帰国してすぐ、彼女(19)から会いたいという電話が来た。