プリントアウトして病院へ逝くためのメモ

ミキティ子が天性の媚態で一定時間に一度、乃至、向かい合って話すときに髪をかきあげて脇や胸元を見せるから、そして離席時にくるりとこちら側に椅子を回してパッと足を開くから、というのを愚痴にするにせよ(残念ながら彼女は今まで会社員生活の中で見たことのあるどんな美人よりも美人で既婚で下品さはゼロ)、それが、つまりルサンチマン的なものが、おれのうつの原因とは思えない。つまり、医師面談でも一度話題になり、以下の記事(http://diamond.jp/series/izumiya/10014/)でも触れられているところの、「原因除去」の件について、それはまだ見つかっていないのが現状。とはいえ、記事のいうところの、「この仕事をしていくことに、もう意義が感じられない」なり、「この仕事をすること自体が、自分を裏切っている行為に感じられる」なり、を自分に適用してみたら、それはそうだけどしかし、としか言いようがないし、、そんな「うつ」をこの国から除去なんかできるわけねえだろJKという話ではある。休憩の折に街を歩き、トラックが走るのを みて、ああした働き方には「意義が感じられ」るだろうか、「自分を裏切っている行為に感じられ」なくなるだろうか、と問うと、ふいに学生時代の配送バイトのことを思い出す。平日の昼の奥さんたちは、ときには薄着だし、やはり胸元が見えるし、ジュースをくれるし、しかしなお、ああこれは不毛だ、と感じたのは同じなのだ。
元鬼部長が来た。これだろうか。

「お疲れ様です」ミキティ子のかすかな笑顔は残念ながらえらすちかのスター20個分に相当してしまう。20回もクリックしなくても、リアルのパワー、こわい。こういうことではリアル/ネットのどちらに優位性があるのか知らないけど、そうして人から力をもらう側の身、リルケの詩なんてぜんぜん分からない身、ぜんぜん与える側でない身、というのに甘んじて、酔いにも乗じて書くとすると、ぜんぜん可能性のない恋に恋する今回の俺はいろいろと不幸だ。かわいそう。もっと可能性のあるものに、リルケでなく、もっと動きのあるものに情熱を、具体的な情熱を、その情熱をつなぎとめる努力をしないと、それは、恋ではなく、たんなる窓際の立ちバックになってしまう。違う、窓際の立ちバックをロードレーサーにまたがって望遠レンズで覗いている男(→カツ丼→カツ丼)になってしまうのだ。
そうして記事中にもある通り、復帰プログラムの過程にあって、単純作業──しかも、単数の単純作業であって、別件が入らない、という意味では、さらにもっと単純な作業──に没頭している俺は、ぐずぐずと上記のようなテキスト日記を書きながらプログラムの修正をし、テスト仕様書をコピペし、コンパイルして、アップロードして、彼女──ミキティ子がぼりぼり足を書くのを横目に見ていた。足をぼりぼり掻くさまがこんなに e-l-e-g-a-n-t な人はほかに見たことがない。
迂回しすぎだ。彼女のことはどうでもよい。
問題は、今回の件が初めてでなく、4度目だ、ということ。いや、下手したら5度目だ。それらに共通する点、なんだろう。
いくつかの候補を打ち消したあとで、ああ、期待されて始まっていることか、とか。
ど新人です、のときと、病み上がりです、のとき、うまくいったかもしれない、とすると、今回は、病み上がりです、のポジションになった。苦手かもしれない人がどんどん別チームへ移る。あとは、もう一つ、すげえいい後輩が来てくれれば、と思うのだが、あの時代のT君は、あれは、あのレベルは、期待しようがないかもしれない。
これ、プリントアウトしてどうすんの?